今回は宮城県利府町の森郷児童遊園に保存されている(いた)ED91 11・C58 354を。
(2021年5月中旬訪問:2022年1月に解体)
森郷児童遊園 ED91 11・C58 354
ED91 11
日本における交流電化の礎となった水銀整流器式の交流試作機、ED91 11。
戦後私鉄向け箱型電機のような車体が何とも興味深いのであるが、いかんせん長年整備されていないのか外観の状態は「それなりに」悪く、1エンド側は窓ガラスが割れている……といった具合に散々な状態。
試験的に交流電化された仙山線で運用され、1970年に老朽化のために廃車となった後に現在地で保存された。
しかし、ED91 11の機器に含まれているPCBかアスベストの関係かはわからないが近日中に解体されることとなり、C58 354と共に工事用の低いフェンスが設置されていた。
ED91 11の2エンド側。
外観こそ補修さえ行えば綺麗になりそうであるが、いかんせん屋根のない屋外で保存(放置)されている以上、健康・環境汚染リスクのあるPCBで「厄介なことになる」前に何とかしないといけない部分もある以上は自治体側としてはいくら産業遺産的価値があるとはいえ解体もやむを得ないと判断したのも分かる気がする。
実際、各地で屋外保存されている交流機(交直流機)の一部は車両の重量問題もあるが、それ以上に危機管理の一環で内部機器を撤去している車両が多いのは「交流機器は屋外で雨ざらしで保存するにはリスキーだから」というのもあるのだろうな、と感じた次第。
いつまでもあると思うな親と金、そして保存車、というのが身に染みる
各部を見る
ED91 11の2エンド側デッキ部分。
戦後私鉄箱型電機は「だいたい」こんな構造をしているのかと考えると興味深い。
ED91 11の2エンド側台車。
一般的な吊り掛け構造だが、製造時期的が時期なのでNSK製ローラーベアリング軸受になっている。
また、機器に書かれている検査表記によれば「1965年6月に郡山工場で各部検査が行われた」とあるが……果たしてコレは後年書き加えられたものだろうか?
仙山線のような勾配路線には欠かせない砂撒き装置。
実際、サバゲフィールドに行くために仙山線に乗っていると勾配に次ぐ勾配で「こら交流電化の試験線区に選ばれる理由もわかる」と思った次第である。
警笛部分。
寒冷地で運用された機体という事もあり、警笛カバーが警笛の上に取り付けられている。
C58 354
ED91 11と同地で保存されているC58 354。
同機も各部の脱落や紛失が多く、手の施しようがないのだろうか?と思ったのであるが、同じくここの保存車を撮影に来ていた人曰く「大崎市のC58、とりわけ中山平温泉のC58はもっと酷い、キャブの底が抜けている」という話で「第一に自治体の体力あっての保存車だよなぁ」と思ってしまった。
C58 354のキャブ部分。
いくら東北本線の利府から品井沼方面まで繋がっていた旧線跡に保存されている、とはいえ長年整備されずに「放置」された状態ならば、アスベスト以前に「(地域住民の)治安の問題」の面であっさり解体されるのも無理がないような気がするのは何故だろうか?